本課題では土着微生物が土壌中で安定的に維持され、機能を発現するメカニズムを ①自然土壌における団粒構造と微生物叢の評価と②人工団粒作成・培養実験を基に検討します。これによって、窒素循環を担う微生物の生存・活動を制御する物理化学的な環境要因を明らかにします。


炭素・窒素代謝を行う土壌微生物の多くは、「団粒」と呼ばれる微細な土壌粒子を骨格とする多孔質構造体を住み家にしています。そのため、異なる土壌において微生物叢が異なり、温室効果ガスの発生・吸収が異なる大きな理由は、微生物の住み家である団粒の微視的な物理化学的性質の差異にあると考えられます。課題I-1では、ここに着目し、土着微生物が土壌中で安定的に維持され、機能を発現するメカニズムの解明を目指します。そのために大きく2つのアプローチを用います。
第一は、自然土壌における団粒構造微生物叢および微生物代謝プロセスの評価です。ここでは、畑や森林など自然条件で形成された土壌団粒を対象に、(A)団粒構造を壊さず、X線CTや微小電極・薄片作成技術を用いた、団粒内間隙の可視化や団粒表面から内部の環境勾配および微生物群集の直接観察・測定、(B)団粒構造を段階的に解体して得られる各サブユニットの物理化学特性および菌叢解析、(C)異なる発達段階にある土壌シリーズを用いた長期的な団粒構造形成、窒素代謝、およびそれに関わる菌叢の評価、を行います。
第二は、土壌構成要素(サブユニット)から実験的に人工団粒を作成するアプローチです。土壌団粒の主要構成物は鉱物粒子ですが、少量の有機物やその他の接着物質により粒子同士が結合することで形成されると考えられています。そこで、自然土壌団粒の評価から得られた接着物質や団粒化促進因子を基に、自然に存在する材料(鉱物、有機物)を用いた人工団粒作成を行い、微生物群集の定着や機能に及ぼす影響を評価します。また、この知見を微生物の資材化技術の確立(課題Ⅲ)に活用します。

和穎朗太
Rota Wagai
農業・食品産業技術総合研究機構
農業環境研究部門 気候変動緩和策研究領域
上級研究員
◎ 研究分野
土壌生物地球化学
◎ 研究キーワード
団粒構造、有機物・鉱物相互作用、炭素・窒素動態
光延聖
Satoshi Mitsunobu
愛媛大学
大学院農学研究科
准教授
藤井一至
Kazumichi Fujii
森林総合研究所
主任研究員
山口紀子
Noriko Yamaguchi
農業・食品産業技術総合研究機構
農業環境研究部門 化学物質リスク研究領域
グループ長補佐
須田碧海
Aomi Suda
農業・食品産業技術総合研究機構
農業環境研究部門 化学物質リスク研究領域
主任研究員
チェン ジンセン
Jinsen ZHENG
森林総合研究所
研究員
島田紘明
Hiroaki Shimada
農業・食品産業技術総合研究機構
農業環境研究部門
契約研究員
◎ 研究分野
土壌科学
◎ 研究キーワード
有機無機複合体、土壌生成分類
新宮原諒
Ryo Shingubara
農業・食品産業技術総合研究機構
農業環境研究部門 気候変動緩和策研究領域 革新的循環機能開発グループ
契約研究員
◎ 研究分野
生物地球化学、安定同位体地球化学、生物地球科学
◎ 研究キーワード
安定同位体比、温室効果ガス、メタン、北極域、東シベリア、湿地、火山ガス
伊藤虹児
Koji Ito
農業・食品産業技術総合研究機構
農業環境研究部門 気候変動緩和策研究領域 革新的循環機能開発グループ
契約研究員
◎ 研究分野
土壌微生物学
◎ 研究キーワード
残留性有機汚染物質、微生物分解、脱塩素酵素遺伝子
松村愛美
Emi Matsumura
農業・食品産業技術総合研究機構
農業環境研究部門 気候変動緩和策研究領域
契約研究員
◎ 研究分野
森林微生物生態学, 森林病理学
◎ 研究キーワード
群集生態、内生菌
土壌微生物の機能の多様性と微生物叢安定化機構を明らかにし、そのポテンシャルを最大限に活用していくためには、様々な先端的技術を開発していくとともに、そうした技術を用いて土壌微生物の全貌を解明していく必要があります。本項目では、シングルセルゲノミクス、ロングリードシーケンシング、バイオインフォマティクス、ネットワーク解析などの先端的技術に注目し、この目標に向けた研究を展開します。

私たちのグループでは、土壌微生物の機能の多様性と微生物叢安定化機構を明らかにし、そのポテンシャルを最大限に活用していくために、様々な先端的技術を開発していくとともに、そうした技術を用いて土壌微生物の全貌を解明します。
具体的には、以下の技術に関する研究に取り組んでいます。
・微生物由来の長鎖DNAを効率よく抽出し、ロングリードシーケンサーを用いてシーケンスデータを取得する技術や、取得したシーケンスデータをアセンブリし、プラスミドを含む土壌微生物のゲノムを網羅的に解読する技術。
・微小液滴技術を用いて土壌微生物を単離し、単離した微生物を対象にシングルセルゲノム増幅物のライブラリーを構築する技術や、構築したライブラリーをもとにショートリードシーケンサーを用いてシーケンスデータを取得する技術。
・ゲノム情報解析に基づき、個々の土壌細菌のN₂OやCH₄代謝機能を推定したり、有用未培養菌を培養したりする技術。
・ゲノム情報や土壌メタゲノム情報を用いることで、窒素代謝に関与する遺伝子とこれが帰属する微生物種との関係性や、それらの空間的分布を解明する技術。
・土壌における窒素代謝の遺伝子ネットワークの全貌を解明するとともに、比較ゲノム・比較メタゲノムアプローチによって窒素代謝関連機能遺伝子を発見する技術。
・N₂O無害化に関与する微生物種間の複雑な関係性に関する膨大な情報を取得するとともに、DNAメタバーコーディング(DNA情報に基づく生物叢同定)によってそうした情報をネットワーク科学の観点から分析する技術。
・ネットワークデータや個々の細菌・真菌種のゲノムデータを統合することで、生態系内で中核的な役割を担っていると考えられる微生物種の組み合わせ(コンソーシア)を明らかにする技術。

私たちのグループでは、土壌微生物の機能の多様性と微生物叢安定化機構を明らかにし、そのポテンシャルを最大限に活用していくために、様々な先端的技術を開発していくとともに、そうした技術を用いて土壌微生物の全貌を解明します。
具体的には、以下の技術に関する研究に取り組んでいます。
・微生物由来の長鎖DNAを効率よく抽出し、ロングリードシーケンサーを用いてシーケンスデータを取得する技術や、取得したシーケンスデータをアセンブリし、プラスミドを含む土壌微生物のゲノムを網羅的に解読する技術。
・微小液滴技術を用いて土壌微生物を単離し、単離した微生物を対象にシングルセルゲノム増幅物のライブラリーを構築する技術や、構築したライブラリーをもとにショートリードシーケンサーを用いてシーケンスデータを取得する技術。
・ゲノム情報解析に基づき、個々の土壌細菌のN₂OやCH₄代謝機能を推定したり、有用未培養菌を培養したりする技術。
・ゲノム情報や土壌メタゲノム情報を用いることで、窒素代謝に関与する遺伝子とこれが帰属する微生物種との関係性や、それらの空間的分布を解明する技術。
・土壌における窒素代謝の遺伝子ネットワークの全貌を解明するとともに、比較ゲノム・比較メタゲノムアプローチによって窒素代謝関連機能遺伝子を発見する技術。
・N₂O無害化に関与する微生物種間の複雑な関係性に関する膨大な情報を取得するとともに、DNAメタバーコーディング(DNA情報に基づく生物叢同定)によってそうした情報をネットワーク科学の観点から分析する技術。
・ネットワークデータや個々の細菌・真菌種のゲノムデータを統合することで、生態系内で中核的な役割を担っていると考えられる微生物種の組み合わせ(コンソーシア)を明らかにする技術。
岩崎渉
Wataru Iwasaki
東京大学
大学院新領域創成科学研究科
教授
◎ 研究分野
バイオインフォマティクス
◎ 研究キーワード
ゲノム進化、メタゲノム、機能未知配列
◎ 研究分野
植物–微生物相互作用
◎ 研究キーワード
植物–微生物相互作用
東樹宏和
Hirokazu Toju
京都大学
生態学研究センター
准教授
成川恵
Megumi Narukawa
理化学研究所
バイオリソース研究センター
開発研究員
津田宗一郎
Soichiro Tsuda
bitBiome株式会社
執行役員 研究開発
◎ 研究分野
シングルセルゲノム解析
◎ 研究キーワード
合成生物学、ファージ、抗生物質耐性
増田幸子
Sachiko Masuda
理化学研究所
環境資源化学研究センター
研究員
按田瑞恵
Mizue Anda
東京大学
大学院新領域創成科学研究科
特任研究員
◎ 研究分野
ゲノム微生物学、微生物生態学
◎ 研究キーワード
Chen Eric Chun Hung
Eric Chun Hung Chen
東京大学 大学院新領域創成科学研究科
特任研究員
◎ 研究分野
バイオインフォマティクス、比較ゲノミクス
◎ 研究キーワード
島﨑智久
Tomohisa Shimasaki
理化学研究所
バイオリソース研究センター
博士研究員
◎ 研究分野
植物微生物相互作用
◎ 研究キーワード
メタゲノム解析